WHY SO PRICEY

牛たん専門店が正直に話します
最近、牛たんが高い理由

産地の話から、値段の裏側まで。

「牛たんって、なんでこんなに高いの?」お店でもネットショップでも、いちばんよく聞かれる質問かもしれません。今回は、この質問に逃げずに答えます。牛たんがどこから来て、どうやって仙台に届き、なぜ昔より高くなったのか。そして、それでも喜助が値段ではなく「価値」で勝負すると決めている理由まで。1975年から牛たんひと筋の喜助が、正直に話します。

皮付きのまま置かれた一本の牛たん(原木)
牛1頭にたった1本、皮付きの牛たん

牛1頭から、たった1本

まず、いちばん根っこの話から。牛たんは、牛1頭から1本しかとれません。しかも1本のうち2割ほどは皮で、たん下の脂やスジまで含めると4割近くが焼き物には使えません。焼いてお出しできる部分は、そこからさらに絞られます。

そして日本で流通する牛たんのうち、国産はぜんぶ合わせても数%以下。和牛の牛たんもありますが、流通量はほんのわずかで、価格はさらに上です。つまり仙台名物の牛たん焼きは、ほとんどが海の向こうからやってくる牛たんで成り立っています。ここが、牛たんの値段を考えるスタート地点です。

ちなみに国産の牛たんは流通量が少なく、扱える牛たん専門店はわずかです。喜助ではネットショップで一部お取り扱いしています。

牛たんは、海を渡ってくる

では、どこから来るのか。主な産地は北米とオーストラリア圏です。財務省の貿易統計(2025年)で日本の輸入量を見ると、アメリカが約19,000トンでトップ、次いでオーストラリアが約11,000トン、カナダが約2,500トン。この3か国で大半を占めます。

喜助でも、創業まもない頃からアメリカを中心とする北米産を使ってきました。オーストラリア産も長いつきあいです。そして最近は、ヨーロッパや南米から入ってくる牛たんも増えてきました。執筆時点では、お店の定食に使う牛たんは北米産がメインです。

牛たんの主な産地を示した図。北米(アメリカ・カナダ)と豪州圏(オーストラリア・ニュージーランド)から日本へ矢印が伸び、近年増えてきた産地としてヨーロッパと南米が点線で示されている
北米・豪州圏(実線)を中心に、近年はヨーロッパ・南米(点線)からも。海を渡ってくる牛たん

産地で何が違うかというと、味です。牛たんの味は、牛が育った環境と食べた餌でずいぶん変わります。ワインの味が土壌で変わるのと同じで、「牛が育った国」がそのまま牛たんの個性になるんです。

  • アメリカ・カナダは、とうもろこしや麦など穀物で育てる「グレインフェッド」が主流。脂のりがよく、厚切りでもやわらかい。甘みのあるまろやかな旨味は、仙台の厚切り文化と相性抜群です。
  • オーストラリア・ニュージーランドは、牧草で育てる「グラスフェッド」が主流。脂は控えめで、赤身の旨味が力強く、歯ごたえがあります。

広域仙台圏には百店以上の牛たん専門店がありますが、どの産地をどう使うかは、お店ごとの大切なこだわりです。

日本は、世界一の牛たん好き

もうひとつ知っておいてほしいのが、世界の中での日本の立ち位置です。世界の牛たん消費量は、日本がダントツの1位。世界の牛たん輸入額の約67%を日本が占めています(2024年)。2位のインドネシアが約12%、3位はなんとアメリカ。自国の良い牛たんは日本に売って、国内向けには他の国から輸入している、という少し不思議な構図です。

つまり牛たんは、世界中で日本が「取り合いの真ん中」にいる食材。しかも近年は、日本以外のアジアの国々も輸入量を増やしています。良い牛たんほど、世界の相場の影響をまともに受けます。

創業のころと今。仕入れは数倍に

ここからが「高い理由」の本丸です。喜助が創業した1975年、1ドルはおよそ300円でした。それから円高の時代を経て、いまはまた1ドル150円前後。為替だけ見れば、昔より輸入しやすくなったはずです。

ところが、牛たんそのものの値段(外貨)が大きく上がりました。日本以外のアジアの国々が牛たんの輸入を増やし、世界で取り合いになったこと。2003年にアメリカでBSEが確認されてアメリカ産牛肉の輸入が止まり、業界全体が産地の切り替えを迫られたこと。そしてコロナ禍以降は、海外の食肉工場の人手不足と物流費の高騰、そこに円安が重なりました。

工場の搬入口で、白衣の作業員が段ボール箱を積んだ台車を運び入れているところ
海を渡って富谷の工場に届く牛たん

結果として、喜助の牛たんの仕入れ値は、創業当時と比べて数倍になっています。「牛たんは昔、リーズナブルな価格で庶民の食材だった」というのは本当です。でもそれは、もう何十年も前の話なんです。

それでも、値段ではなく価値で

原料が高くなったなら、薄く切って量を減らすか、手間を省くか、あるいは値段を上げるか。選択肢はいくつかあります。喜助が選んできたのは、手間を省かないことでした。

値段の安い産地のものもあります。でも私たちは第一に、50年以上変わらない「喜助の味」が守れる原材料しか使いません。

職人が包丁で牛たんの皮をむいているところ
原料が高くなっても省かない、職人の手仕事

仕入れのプロが牛たんを1本ずつ見て選ぶ。職人が皮をむき、厚切りにして、一枚ずつ包丁で切れ込み(キッパ)を入れる。塩をふって味をなじませ、数日かけて熟成させる。この工程は、原料が高くなっても一つも減らしていません。むしろ、高い原料だからこそ、一枚も無駄にできない。

だから喜助は、「安い牛たん」を目指していません。目指しているのは、値段を見て「高いな」と思われてしまったお客様でも、食べ終わって「これなら納得」と思ってくださること。値段ではなく、価値でお応えする。それが、原料が数倍になった今も変わらない喜助の答えです。

POINT

仕込みの工程は潜入!喜助の工場 職人仕込牛たんができるまで、切れ込みの話は厚いのに柔らかい!牛たんの隠し包丁、キッパで詳しくご紹介しています。

まとめ 牛たんが高い理由

  • 牛1頭に1本だけ。国産は数%以下で、ほとんどが海を渡ってくる
  • 主な産地は北米とオーストラリア圏。近年はヨーロッパ・南米も。産地は味の個性そのもの
  • 日本は世界一の牛たん消費国。良い牛たんは世界で取り合い
  • アジア各国の輸入増・BSE・物流費・円安が重なり、喜助の仕入れ値は創業当時の数倍に
  • それでも手間は省かない。喜助が目指すのは、安さではなく「これなら納得」

高くなった原料に、変わらない手間をかけて。喜助の牛たんを、ご家庭へ。

職人仕込牛たんを見る

この記事の執筆・監修について

執筆・監修:味の牛たん喜助(株式会社キスケフーズ)

味の牛たん喜助は、1975年に仙台で創業した牛たん専門店です。産地別の輸入量は財務省貿易統計(e-Stat・2025年)、世界の消費量は世界貿易統計(2024年)を参照しています。

公開:2026年9月9日/本記事は公開時点の情報です。商品の内容量・原材料・原料原産地・最新の取り扱いは、各商品ページとパッケージの表示をご確認ください。